2017.2.16 吉田俊哉会長挨拶

 

皆さん、今日も例会出席ありがとうございます。

今日は、珍しく「法律の話」から入ります。

今朝の新聞に、架空請求詐欺の記事が出ていました。

「高齢者施設の優遇措置を受けられる」という話を持ち掛けられて「辞退します」と応じたところ「違約金が発生します」と言いくるめられて、何がしかのお金を払わされてしまった、という事例です。

なぜ、そういう話を信じてしまうのでしょう。

事実認定に誤りを生じたからです。

裁判でも登記でも、法律知識は実を言えば、それほど重要ではありません。

事実認定さえしっかりしていれば、判例や先例を検索すればいい。法的論理は、どうにでもというと大げさですが、それなりに理屈がつきます。法律の専門家なら一応は論理構成の修練をしていますから、妥当な結論を導くために、いろいろ工夫はしますが。

さて、その最も重要な「事実認定」に、どのように誤りが発生するのでしょう。

この架空請求の被害者の場合は、まず「無知」が原因です。

高齢者施設の利用方法にどのような仕組みがあるのか。福祉の専門家じゃないと、多分分からないのです。

その無知に、この被害者は付け込まれた。電話で話している相手が「福祉の専門家、又は担当官庁等の職員」という設定を、信じてしまう。

よく分からない分野の話を「専門家」と名乗る人に持ちかけられると「その分野の話を専門用語を交えて話すのだから、そうなのだろう」という思い込みが生ずるのです。

電話では、また訪問販売などでも、話をしている相手が「本物」かどうかは実は分からない。しかし無知な分野ほど、人は「それらしい雰囲気」に騙されます。

多分、ロータリークラブ会員の皆さんは、そういうウソには騙されないと思います。騙されやすいタイプなら、社会的に成功してクラブに入る可能性が低くなるからです。ですから、皆さんの周囲にも必ずいる「騙されやすい」人のために、今日の話を覚えておいてください。

事実認定の誤りは、一つは「無知」により発生します。

もう一つは、何でしょうか。

現代社会の病理を見るに、私はそれは「イデオロギー」だと思います。

ここでは「イデオロギー」を「本当は根拠がない又は不明確なのに、充分な根拠があるかのように擬装された信念の体系」という意味で使っています。

例えば「特定の民族が特別に優れている、又は劣っている」「特別な家系の者が指導者であるべきだ」「指導者は間違いを犯さない」。

世界中に、そういう根拠のない思い込みが溢れています。

そしてあるイデオロギーの信奉者と別のイデオロギーの信奉者が対立して、悲劇を引き起こしています。

民主主義は、「そういう根拠のない思い込みに基づかないで、国家や社会を運営しよう」という思想ですから、私たちは、自分の周囲にも世界のどこにでもふんだんに溢れている、あらゆる「悪い意味でのイデオロギー」から自由になるべきなのだと思います。

思い込みに囚われない「客観的な事実認定」それが全ての基本です。